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「ダークペダゴジー」が、危険タックルを引き起こした。教育学者が指摘若者を教育する場である学生スポーツの現場で、なぜこうした状況がもたらされてしまったのか。山本宏樹・東京電機大学助教(教育社会学)は、「”ダークペタゴジー(闇の教授法)”による心理的支配の典型例」と、ハフポスト日本版への寄稿で指摘する。危険タックルを招いた「指導」の構造を読み解き、解決へのヒントを示してもらった。
今回のケースを分析する際に有効なのが、ダークペダゴジーという概念です。ダークペダゴジーは、倫理的に問題のある手法を用いて他者の成長発達、価値観や知識の獲得に介入する行為を指すものです。より具体的には「暴力・強制・嘘・賞罰・欲求充足の禁止・条件付き愛情・心理操作・監視・屈辱」などを用いた教育行為がダークペダゴジーに当たります。今回のケースの「追い込み指導」はまさにダークペダゴジーの典型例です(★注1)。
監督やコーチは無自覚に行ったのだろうと思いますが、今回のケースの「追い込み指導」において、ラフプレーを行った選手が直面したのは「相手のクオーターバックをつぶせ」という「指示」に対して承諾しても拒絶してもペナルティが待っているという逃げ場のない状況でした。これは児童虐待やパワーハラスメントの場面で見られる「ダブルバインド」状況です。「指示」を出された時点でバッドエンドは既に確定しており、しかもどちらかを選択したという事実によって結果を自己責任化されてしまうのです。
今回のケースのように、支配者からの指導によって、被支配者が加害の一端を担わされる事態は、現実社会のいろいろな場所で起こりえます。たとえば、虐待的な家族関係のもとでは、子どもが保護者の意向に従って暴行や窃盗、売春、麻薬摂取などに手を染めさせられる場合があります。親子は「庇護と支配」が表裏となった「条件付き愛情」関係に陥りやすいのです。ヤクザの親分・子分関係もまたそうした親子関係を誇張的に表現したものだといえます。
もちろん「意思の強さがあれば、それでも拒否できたはずだ」ということはできるでしょう。しかし、たとえるならば、今回のケースの指導は大多数の人間がダークサイドへと転落する険しい「崖路」のようなものなのです。高い運転技術と繊細な注意力をもって進めば無事に通れるかもしれませんが、それをできる人間が現に限られている以上、国や業界団体が「ガードレール」を設置したり、「警戒標識(幅員注意)」や「規制標識(通行止め)」などを出したりしたほうがよいと思います。
また、つけ加えるならば、今回のケースのような「崖」から落ちるのは、勤勉で従順な者たちである点にも注意が必要です。
ミルグラムのアイヒマン実験において、電気ショックを与え続けた市民の心中では、監督者への恐怖心や実験を中止させることによる損害賠償請求へのおそれだけでなく、引き受けた仕事に対する義務感や実験者への礼儀心が働いていました。ホロコーストで膨大な殺戮指令を下したのも、道徳規範を超越した悪魔的異常者というより、従順かつ勤勉な役人だったのかもしれないのです(★注6)。
対策① ガイドラインの策定
対策② リミッターの設定
対策④ 暴力的文化に対する対抗
対策⑤ 加害者に対する支援
なぜ学校で体罰や指導死が起こるのか?――社会に蔓延する“ダークペダゴジー(闇の教授法)” / 教育社会学・教育科学 、山本宏樹氏インタビュー | SYNODOS -シノドス-
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