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低い断熱性なぜ放置、世界に遅れる「窓」後進国ニッポン  :日本経済新聞

 日本の住宅の断熱性能が相対的に低いことをご存じだろうか。部位ごとにみれば窓の性能に大きな課題がある。窓の重要性について啓蒙活動を続ける松尾設計室の松尾和也代表は、「『窓』先進国の欧州に比べればもちろん、日本と気候が近い中国や韓国にも劣っている」と話す。松尾代表に、近年の傾向を踏まえて解説してもらう。

 さらに、日本では最近まで、断熱性能に有利な樹脂製の枠と三重(トリプル)のガラスを使った製品は、ほとんど販売されていませんでした。その状況下では、日本の最高レベルのサッシが韓国の推奨基準に達することができなかったのです。

 こうしてみると、いかに日本の窓が世界的に遅れているのかが分かります。日本メーカーなのに、中国に向けては日本国内向けよりも性能の高い窓を出荷している会社があるほどです。

 日本建材・住宅設備産業協会の調べによれば、住宅で生じる熱の損失を部位ごとに相対化してみると興味深いことが分かります。窓などの開口部を通して、冬に暖房の熱が逃げる割合は58%、夏の冷房中に入ってくる割合は73%にも及びます。暑さの原因の7割、寒さの原因の6割が窓とみなせます。

 熱伝導率は、アルミかそうでないかで約1000倍も異なるのです。だから世界的にはサッシの樹脂化や木質化は当たり前になってきています。

 このグラフを見れば分かると思いますが、アルゴンか否かによる下枠表面温度の差はせいぜい0.2~0.3℃程度しかありません。しかし、スペーサーが樹脂なのかアルミなのかによって、2℃程度も違うのです。しかもこの2℃の間には、結露が発生するかどうかの境目である9.3℃というラインが含まれています。樹脂スペーサーであれば、空気層がアルゴンでなくても結露しないことが分かります。

 ドイツやオーストリアでは窓の結露はもちろんのこと、壁体内の結露においても徹底的に抑制が図られます。「建築物理上、結露を引き起こすのは誤った設計であり、人の健康を害するから瑕疵である」という考え方が根底にあります。事の重さを痛感します。

■2014年は「窓改革元年」

 欧州ではこれまで20年以上かけて、地道に、まずは断熱強化に取り組んで来ました。一定の成果が見えてきたということで、ようやく一次エネルギー基準に取り組み出しています。

 一方、日本の政策は、断熱性能の低い状況を放置しながら設備機器によって一次エネルギーさえ減らせれば良いと考えている節があります。エネルギー輸入量、光熱費、CO2(二酸化炭素)排出量を減らすことが目的で、住む人の快適性や健康といったことは二の次になっています。家を建てるお金を払うのも、そこに数十年住み続けるのも住人であるのに、その住人のことが第一に考えられておらず、窓メーカーも法律や基準も現状に甘んじています。

 とはいえ、2014年に入ってから日本の窓メーカーに、この状況を改善していこうという気運が生じています。現在は各社がU値1W/m2・K前後と世界レベルのサッシを発表しています。北海道や東北、日本海側の地域ではこのレベルが必須といえます。東京や大阪の近辺でも、U値1.5W/m2・K程度の窓が、健康で快適でありながらトータルコストを安く抑えるのに必須のアイテムです。

電子書籍、読み放題広がる 月500円で90誌1年分も  :日本経済新聞電子書籍の読み放題サービスが広がってきた。ソフト開発のオプティムは月額500円で15社90誌のバックナンバーをタブレット(多機能携帯端末)で読めるサービスを月内に始める。「定額読み放題」にはNTTドコモなども参入。利用者は雑誌や書籍、漫画を幅広く読むことができ、出版社は新たな読者を獲得しやすくなる。電子書籍がより身近になりそうだ。

マウス全身を透明に 理研、解剖せず臓器の働きを一目で  :日本経済新聞 研究チームは特定のたんぱく質が光るように遺伝子組み換えしたマウスも透明化し、すい臓の立体的な画像を1時間程度で得た。従来は臓器を輪切りにして撮影した画像を重ねており、2~3日かかっていた。細胞の働きも簡単に見えるようになり、糖尿病などの診断や治療につながる技術の開発に役立つとしている。

退職者の保険料上げ・加入制限、大企業健保に容認へ 厚労省案  :日本経済新聞 厚生労働省は、大企業で退職後の加入も認めている健康保険組合が退職者の保険料を上げたり加入制限したりできるよう規制を緩和する方針だ。健保の財政負担を軽くする狙い。対象は日立製作所、ソニー、三菱東京UFJ銀行、日本生命、全日本空輸、住友商事、キヤノン、キリンビール、KDDIなど61の大企業の健保組合だ。

美しい鳴き声のチャイロコツグミ、倍音列に従った音程を選択していた | スラッシュドット・ジャパン サイエンス

北米で繁殖するチャイロコツグミのオスは鳴き声が音楽的なことで知られるが、旋律が倍音列に従った音程で構成されていることが研究により判明したそうだ(論文アブストラクト、Science、Slashdot)。

人間の音楽で使われる音階の多くは、一部またはすべてが整数倍の周波数の音程を並べた倍音列に基づいて作られている。このような音階の成立について、発声機構の制約によるものか、文化的に選択されたものなのか長らく議論されてきた。研究者らは北米各地で50年以上にわたって録音されたチャイロコツグミの鳴き声から10以上の楽音を含む14羽の鳴き声71点を抽出。分析の結果、多くが倍音列に基づいたシンプルな周波数比の音程を使用していることが判明したとのこと。また、これらの音程が発声機構の制約によるものではなく、能動的に選択されたものであることもわかったという。

鳥類の多くが倍音列に従った鳴き声を持つという証拠はないものの、整数倍の周波数比を好むのが人類だけではないことも明らかになった。これらの発見は音階の成立をめぐる議論などにも影響を与えると考えられるとのことだ。

「ドメイン登録情報の不正書き換えによるドメイン名ハイジャック」が発生 | スラッシュドット・ジャパン IT

JPCERT/CCが、「登録情報の不正書き換えによるドメイン名ハイジャックに関する注意喚起」を出している。レジストラ/レジストリに登録されているドメイン情報を書き換え、対応するIPアドレスを不正なものに書き換えることで、ユーザーに対し本来の接続先とは異なるサーバーへ接続させ、攻撃や情報の窃取などを行うという事例が複数報告されているという。

確認されたのは、国内組織が使用している.comドメイン名に関する不正書き換え。具体的なドメイン名については明らかにされていないが、日経新聞が「日本経済新聞 電子版」(nikkei.com)および「Nikkei Asian Review」(asia.nikkei.com)において影響があったことを記事にしている。また、.jpドメインについては今のところ問題は確認されていないようだ。

攻撃手法としては、以下の4点が考えられるという。

ドメイン名登録者やドメイン名管理担当者になりすまし、レジストラの登録情報を書き換える
レジストラのシステムの脆弱性を使用し、レジストラの登録情報を書き換える
レジストラになりすまし、レジストリの登録情報を書き換える
レジストリのシステムの脆弱性を使用し、レジストリの登録情報を書き換える
注意喚起文書でも述べられているとおり、上記の2〜4についてはユーザー側での対策は不可能である。そのため、ドメイン名の管理に使っているIDやパスワードなどの適切な管理とともに、ネームサーバー情報などの定期的な確認などが推奨されている。

また、JPRSもこれに対する発表を行っている。これによると、誘導先の偽サイトでマルウェアが配布されている事例が確認されたという。

「老人力」は本当にある | 小さな組織の未来学

老人力」という概念を作り出した赤瀬川原平氏が亡くなった。老人力とは、高齢者の「物忘れ」のような老化現象を、むしろ「老人力がついてきた」とプラス思考へ変えた発想だった。

単純に覚えるということを若者と比較すると思っている以上の差はない。つまり、赤瀬川氏が指摘しているのは頭の回転が遅くなったことを意味しているのであって、覚えること自体は高齢になっても努力さえすれば可能である。

悲しい、うれしいなど、感情が強く動かされたときの記憶は、すぐに忘れない記憶となる。そして、この記憶は年齢に関係なく忘れないものになる。だから、なかなか覚えられないと思うときは、心からうれしい、悲しいという感情を伴うようにすれば、年齢に関係なく記憶される。

そこで重要なことは、常に現役で学習していく努力を怠らないことだろう。本来の意味から言えば、この総合判断能力こそ老人力と呼ぶべきなのかもしれない。

歳を取ると怒りっぽくなると一般的には思われているが、感情に関係する脳の扁桃体という部位の反応を見ると、高齢になると否定的なことには反応が少なくなり、むしろ前向きで明るいことにはより反応しやすくなる。つまり、嫌なことには目をつむり、楽しいことに目を向けるようになるのだ。

怒りっぽいというのは、前頭葉の働きが衰えて感情の抑制が効きにくくなるせいかもしれないが、一方で楽観的になれるというのも老人力の一つだろう。楽観的になることで早くストレス解消できるようになり、脳へのダメージを減らすことができる。

脳は年齢とともに機能を失っていくのではなく、歳を重ねたほうが有利なところも多い。若者に常に負けるわけではないのだ。

地味ゆえに効果的な罠:日経ビジネスオンライン

 かように、固有名詞は、うそつきと余所者と不勉強な新参者の存在を知らせてくれる機能を備えている。

 地名を正しく読めなかったということは、読めなかった当人が、新しい土地と「はじめて出逢った」ということを示す事実なのであって、そういう意味では、むしろロマンチックな出来事でさえある。

 でも、この度の状況で、宮沢大臣が川内原発に「なじみをもっていなかった」ことは、単に無知であることや、一般論としての無教養とは別の、より致命的な状況を示唆している。

「LOUIS VUITTON」を「ルイスビットン」と読んでしまうマヌカンや、「Chopin」を「チョピン」と読んで恥じない音楽教師や、「MORE」を「モレ」と呼ぶ雑誌編集者と同じく、彼は、自分の仕事に真剣に取り組む気持ちをはじめから持ち合わせていないのだ。 

 が、結果について言えば、どうせ今回の誤読事件は、おそらく、じきに沈静化するだろう。

「政治とカネ」にまつわるお話が、些細なミスやよくある混同であっても、多くの場合、辞任につながるのに対して、今回のケースのような、特段に法に触れるわけでもなければ、辞任の前例も無いタイプの失態は、どんなに致命的な職業的退廃を物語っていても、結局のところ「けしからん」と言われるだけで、実質的にはおとがめ無しで済んでしまう。

 個人的には、この度の宮沢大臣の失態は、大臣としての資質を物語るものとして、就任直後に発覚した「SMバー支出疑惑」よりずっと深刻なものだと考えている。

記者の眼 – Apple SIMがもたらす波紋とSIMの不思議:ITpro

 今回、改めてSIMに関するベーシックな機能を調べたところ、意外に知られていない機能が多かったので、まずはそれを紹介したい。そしてApple SIMをはじめ昨今登場しつつある書き換え可能SIM(Reprogramable SIM)がもたらす影響についても考えてみたい。

 なお今回、SIMの機能を調べるうえでは、英調査会社であるCSMGが、英国情報通信庁である「OFCOM」向けに作成したレポート「Reprogrammable SIMs: Technology, Evolution and implications」(2012/9/25)がとても役に立った。以下の説明は当該レポートの情報を一部参照した。こちらは公開情報となっているので、興味のある方は原文の一読をお勧めする。

 そもそもSIMカードとは何か。一義的には携帯電話ユーザーの識別番号などが書き込まれた接触型ICカードといえる。

 物理的な形態は、クレジットカードなどと同じISO/IEC 7816という規格がベースになっている。切り離す前のキャリアショップのSIMカードの台紙がICカードと同じサイズになっているのは、その名残だろう。

 SIMカードに使われるICカードは、メモリーや演算性能も持っている。記憶容量はカードによってまちまちだが、64kバイト程度から多いタイプで128Mバイトもの容量を持つカードもある。そしてSIMカード上には、Java Card Virtual Machine(JCVM)と呼ばれる、Javaベースのプログラムが動作するOSも搭載されている。

 メモリーに電話帳データなどを記憶できるほか、ネットワーク経由でJavaアプリのダウンロードも可能だ。その際にはTSM(Trusted Service Manager)と呼ばれる信頼された管理システムからの書き込みが基本となる。

 SIMカードが記憶している識別番号は主に3つある。(1)IMSI(International Mobile Subscriber Identity)、(2)MSISDN(Mobile Subscriber Intergrated Service Digital Network Number)、(3)ICCID(Integrated Circuit Card ID)である。

 IMSIは、GSMやW-CDMA、LTEなど携帯電話ユーザーに割り当てられる15桁の識別番号だ。IMSIは、SIMカードに搭載された鍵情報とともに、当該する事業者のネットワークに接続できるかどうかを認証する大事な役割を果たす。またこの際に利用する、事業者ごとに独自の認証アルゴリズムもSIMカード内に記録されているという。

 続くMSISDNは、いわゆる携帯電話番号のことだ。通常15桁以内で、日本では090/080などが該当する。IMSIとMSISDNは通常、規制当局が発行し、携帯電話事業者に付与される。携帯電話事業者に付与されたこれらの識別番号を、オランダのジェムアルトや大日本印刷といったSIMカードベンダーがSIMカードに書き込み、SIMカードをパーソナライズ化した上で、携帯電話事業者に出荷する流れになる。

 なお国内では、設備を持たないMVNO(仮想移動体通信事業者)には電話番号(MSISDN)は直接付与されない。これは電気通信番号規則によって定められている。そのため、例えば格安SIMを提供するようなMVNOは、自社で電話番号を取得しているのではなく、ネットワークの借り先となる携帯電話事業者経由でSIMカードを入手し、ユーザーに提供する形になる。ちなみにIMSIについてはMVNOも指定を受けることが可能だ。

 最後のICCIDは、SIMカード自身のシリアルナンバーであり、19桁、もしくは20桁となる。こちらはSIMカードベンダーが、SIMカードをパーソナライズ化する際に付与する。

 これらの3つの識別番号の中で特にIMSIは、SIMカードを利用するユーザーが当該ネットワークの正規の加入者であるかどうかを証明する非常に重要な役割を担っている。これらの識別番号が書き換えられないことを前提に、現在のモバイルビジネスが構成されているとも言える。

 またSIMカードによって、ユーザーを証明するための機能を端末から取り外し可能にしたことで、ネットワークと端末を分離し、端末選択の自由度を高められる点も特徴だろう。もともとSIMカードは、欧州を中心とした第2世代移動体通信システムであるGSMが標準化される際に発明された。多数の国に分かれた欧州域内で、国が変わるごとに端末まで含めて携帯電話事業者を変えなければならない事態を避けたかったと考えられる。

 このような状況下で10月に突然登場したのが「Apple SIM」である(写真4)。Apple SIMは米国で出荷される新iPadに標準搭載された機能であり、新iPadの携帯電話機能をオンにすると、選択可能な携帯電話事業者が一覧表示される(開始時は、米国のAT&T、スプリント、T-Mobile US、英国のEEの4社)。契約期間は1カ月となっており、例えば旅行などで米国や英国に滞在する場合、現地SIMを調達しなくとも、その場で事業者を切り替えられることになる。

 書き換え可能SIMが一般的な端末まで浸透すると、携帯電話事業者からデバイスメーカーへ、顧客コントロールの主導権が移り変わっていくことは必至だろう。そうなった場合、これまで規制当局がIMSIやMSISDNの付与をどのように扱っていくのか。課題になりそうだ。

 そして最も重要なポイントは、遠隔でSIMの情報を書き込むSM機能に相当する機能を誰が担うのかだろう。SM機能を握ったプレーヤーが、今後の顧客コントロールの中心的存在となる。場合によってはMVNOとしてIMSIやMSISDNを獲得したデバイスメーカーが、SM機能を担う道も考えられる。携帯電話事業者との間で激しいせめぎ合いが起こりそうだ。

2閣僚辞任で漂流するカジノ法案:日経ビジネスオンライン2020年開業という「達成不可能」な目標
木曽 崇
 IR法案は最初からオリンピック後を見据えた計画とし、統合リゾートの経済効果を最大化できるようにすべきです。それが、国民に対する説明責任を果たすということではないでしょうか。政治には、現実に即した政策目標変更が求められています。

業務に大きく影響するマイナンバー:日経ビジネスオンライン想定される主なタスク
タスク 対応内容
体制作りと予算策定 ・マイナンバー制度対応のプロジェクトチームを結成
・プロジェクトチームが中心となって、タスクの洗出し・予算確保・プロジェクト推進を行う。
システム開発 給与・経理等の影響あるシステムの開発・調達を行う。
業務手順検討 マイナンバー制度に伴い影響ある各種業務の見直しを行う
部材・体制等準備 ・マイナンバー制度に伴い新規作成が必要な帳票等の準備や安全管理に必要な機器や施設の確保を行う
・各部署での取扱担当者や制度開始時の事務要員などの確保や外部委託先の準備を行う
事前研修 従業員にマイナンバー制度の内容や事務手順、安全管理等の周知徹底を行う
安全管理研修 ・取扱担当者や事務要員などにマイナンバーに関する安全管理研修を行う
リハーサル・トレーニング ・制度開始に向けた業務・システムの確認のためのリハーサルを行う
・業務・システムの担当者向けトレーニングを行う
番号対応業務開始 番号対応事務を開始する(2016年月の社会保険料定時決定までに番号収集必要?)

ねつ造されるから強靱な「民族の伝統」:日経ビジネスオンライン

「発明」されたタータンチェック

 スコットランドの「集合的なアイデンティティのシンボル」であるこうした「スコティッシュネス」は、実は歴史上稀にみるフェイクだった。

 これは英国人の歴史家ホブズボームの編纂した、その名も『伝統の発明』(1983年、邦訳は『創られた伝統』)と題された本で、ケンブリッジ大学のトレヴァー=ローパーが解題をして広く知られるようになった事実である(『伝統の捏造―スコットランド高地の伝統』)。

 トレヴァー=ローパーは、文化的・政治的にだけでなく、「スコットランドは人的にもアイルランドの植民地というのが正しい」と指摘している。もともとスコットランド人とは、(北極からさほど遠くもない)高地(ハイランド)に住むアイルランド人のことを指していたのである。

 当初は「野蛮人」にして「無教養」とされていたこのスコットランド人が、「誇り高く、自らの文化を持つ民族」と自己定義を始めたのは17世紀後半以降のこと。

 その手始めが衣装だった。もともと外来のものであったにも係らず、この時代以降、タータン柄のキルトがスコットランド固有のものとされるようになる。しかも興味深いのは、スコットランドでキルトが定着すようになったのは、イギリス人企業家が自社の労働者たちが動きやすいように仕立て直したことによる、という事実である(それまではフィリベグと呼ばれる単なる長い肩掛けだった)。

 これに加えて「タータンの柄には氏族ごとの伝統的な模様がある(ことになっている)」というイングランドの繊維企業のマーケティング戦略が乗っかり、「タータンのキルト」という、想像上の伝統が、創造されていったのである。

 これは、「ナショナリズムと資本主義は相互に利用しあう構造にある」とのアーネスト・ゲルナーといった歴史家の指摘にもつながるが、いずれにしても「イギリスという近代がスコットランドという歴史を鋳造した」という、歴史的な逆説を雄弁に物語るエピソードでもある。すなわち、スコットランドが伝統を求め、その伝統を市場が供給することになったと言い換えても良い。こうしてスコットランド人というネーションが形成されていくことになったのである。

「フェイク」であることの強さ

 こうした事実を踏まえるならば、伝統はそこに存在しているのではなく、常に再発見され、生産され続けていくものだといえるだろう。

 現代にあって本当の「伝統」など存在しないから、それは必然的にフェイクであることを覚悟して延命を図るしかない。もちろん、こうした「伝統の発明」はスコットランドに限った話ではなく、多くの国でみられる現象である。フランスでのフランス革命の神話、ユダヤ人にとってのイスラエル、明治期日本における神道の普及等々、国家にとって伝統を再発見し、国民を創造するのは必要不可欠なことだった。

 19世紀後半から西ヨーロッパ各国では、国家と国民と社会がますます一体化し、教育を受ける国民が増え、民主化運動が高まっていった。ホブズボームの表現を借りれば、宗教や地域共同体といった社会的紐帯が緩んでいったのをナショナリズムが代替しなければならず、その中で新参の共同体である「国民国家(ネーション・ステート)」が、正当性を得るために伝統を「発明」していったのである。

 こうみると、民主主義とナショナリズムは対立するものではないことが分かる。

 この2つは双子のような関係にある。

 そしてこのナショナリズムは、単に「発明されたもの」と指摘すれば瓦解するようなものではない。日本を含め、いわゆる識者や知識人と呼ばれる人々はこうしたナショナリズムがいかに「フェイク」であるか、その非合理性や非歴史性を指摘することに躍起になってきた。ナショナリズムが本質的なものでないと説けば、それがナショナリズムに対する解毒剤になると思われていたからである。

 ところが、結局そのような言説でもってナショナリズムを抑制することはできなかった。なぜなら、ナショナリズムはその時々に応じて、アドホックに「発明」されるものだからだ。

 ナショナリズムはフェイクだから弱いのではない。むしろフェイクだからこそ強く、しぶといのである。その本質を理解しなければナショナリズムは理解できないし、ナショナリズムが理解できなければその処方箋も出しようがないだろう。

 独立が実現すれば、スコットランドはスイスが代表権を担うリヒテンシュタイン、フランスとスペインの庇護下にあるアンドラ、あるいはモナコのような国になっていたかもしれない。こうした国々は中世の封建制の名残がそのまま近代の主権国家体系に組み込まれた事例で、ナショナリズムの発露としてのスコットランドとは異なるが、それでも、このように主権を分有した小国はヨーロッパでは決して珍しいものではない。

 過去の「スコティッシュネス」は決して「再現」されるものではない。それは常に「見出されていく」ものなのであり、その際限のないプロセスの中でスコットランドは勝者となっている。

 思えば、日本でも祝うようになったハロウィンは、ケルト人の宗教的儀式がアメリカの商業主義と結びついて今のような形になったものだ。ハロウィンを祝う者はナショナリズムも理解できるに違いない――すこし遅くなったが、ハッピー・ハロウィン。

中国の大都市・上海は不動産バブルとは無縁なのか?[橘玲の世界投資見聞録]|橘玲の世界投資見聞録 | 橘玲×ZAi ONLINE海外投資の歩き方 | ザイオンライン

 これが、上海に暮らすひとたちの景況感がそれほど悪くならない理由だろう。中国全体の景気は減速しているが、沿海部では経済成長が続いている。それを体感しているから、「日本のメディアが騒ぐほどじゃないよ」という感想になる。

 中国政府は、開発の遅れた内陸部のひとびとが沿海部と同じゆたかさを手にできるよう大規模な公共投資を続けてきた。それがとてつもない不動産バブルを引き起こしたのだが、その結末は皮肉なことに、ゆたかな沿海部と貧しい内陸部の経済格差をより広げることになるのではなかろうか。

 不動産バブルが崩壊すれば地方政府の財政は破綻し、経済成長の機会は失われてしまうだろう。その現実が誰に目にもはっきりしたとき、内陸部のひとたちは黙って貧しさを受け入れるだろうか。

 中国の問題というのは、たぶんこういうことなのだ。

クロマグロの国際交渉を分析:日本のジャイアン外交が韓国とメキシコをねじ伏せた

日本の半減提案よりも、メキシコの25%削減提案の方が厳しい内容だったのだ

日本提案だと日本の漁獲量削減はたったの6%。それに対して、韓国は7割削減、メキシコは5割削減という不平等な内容になっている。つまり、日本提案は「俺たちは今までどおり獲るけど、メキシコと韓国に漁獲を削減させて、クロマグロを回復させよう」という内容だったわけ。韓国とメキシコがこれに反発をするのは、当然だろう。メキシコは「みんなで一律に減らそう」と主張したわけで、日本のように自国のみに都合が良い提案をしたわけではありません。

普通に考えれば、メキシコ提案の方が妥当です。「産卵親魚が漁獲がない時代の4%まで減ってしまって大変だ」と騒いでいるのだから、未成魚のみならず成魚も保護するのが当然。また、漁獲量の削減を議論するにも、10年以上前の水準ではなくて、最近年を基準にするのがごく普通の考え方だ。なぜ、メキシコと韓国が日本にだけ都合がよい提案を飲んだかというと、水産庁が商社に圧力をかけて、韓国とメキシコのマグロを輸入させないと脅したからである。民間の環境NGOが圧力をかけるのはまだしも、政府機関が法令によらずに貿易規制をするのはWTOなどに違反すると思うのですが、どうなんでしょう?

日本人は、「日本は交渉が下手なお人好しで、いつも損をしている被害者」という意識があるのですが、とてもそうは見えません。日本のやっていることは、ジャイアンそのものです。

「せっかく日本が素晴らしい提案をしたのに、資源保護に後ろ向きなメキシコが反対して、話がまとまらない」という論調です。メキシコが反対したのは、日本提案があまりにも不平等だったからだと思うのですが、そのことをちゃんと伝えたのは共同通信の井田さんぐらいでした。日本政府が、きわめて不平等な提案を突きつけていることには触れずに、反対する国を悪者扱いするのはいかがなものでしょうか。メディアのみならず、グリンピースまで水産庁の主張を右から左に伝えて、メキシコを非難。グリンピースブログの「合意が得られない場合には、輸入禁止などの強制的な措置をとらざるを得ません」って、まるで水産庁の中の人の発言ですね。

ジャイアン外交が悪いとは言いませんが、そのことを正しく国民に伝えるべきだと思います。

露骨になってきた、「公的相場操縦」の行方 | 競馬好きエコノミストの市場深読み劇場 | 東洋経済オンライン | 新世代リーダーのためのビジネスサイト

GPIFと日銀を使った「公的株価操縦」は、一時的で限定的なメリットに対して、デメリットが大きい。金融緩和の追加プラス消費時税率再引き上げ延期の組み合わせが適切な政策だと思う。

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