再度の回答案
第4課題 日本語の習得研究について概説し、その研究が日本語教育にどう活用できるのか考察しなさい。
1. 教科書の第7章「第二言語としての日本語の習得研究」の記述を元に、2000年以降の研究の特徴を述べる。
(1)2000年以降の習得研究の3つの特徴
1つ目の特徴は、コミュニケーション重視の指導が強調され、「適切さ」に注目して社会言語学・語用論の領域が盛んとなったこと。2つ目の特徴は、外国人就労者の増加に伴い、生活者、年少者の外国人を対象とした研究が増えたこと。3つ目の特徴は、日本語教育への応用研究が増えたこと、である。以下に各領域での研究例を挙げる。以下、【研究要点。研究者名 年】としているのは、教科書の参考文献一覧での研究者名と年である。
(2)文法の習得
【助詞の習得順序について、「は」が「が」よりも習得が早い。八木 1996】、【「~ている」の習得で、「動作継続」の用法が「結果の状態」より習得容易。黒野 1996】、【条件表現の習得について、条件表現で文末のモダリティにより使えない制約があるが、それを誤用するのに母語が影響。稲葉 1991;88】など、文法に関しての習得研究が盛んにおこなわれている。
(3)語彙・意味の習得
【語彙・意味の習得について、日本語母語話者の動詞活用学習では、一つひとつを記憶する項目学習を行っており、学習者では、規則に沿って学習する規則学習を行っている、という仮説がデータで推測できた。菅谷 2010】とされた。これには、作文や発話の学習者コーパス(外国語学習者の文などのテキストのデータベース)が公開されてきたためもあると考えられる。
(4)社会言語学・語用論の分野の習得
【社会言語学・語用論の分野では、不満を表明するときに相手のフェイスを脅かす表現を用いるかどうかに母語の影響がある。李 2004】との研究がある。
(5)技能の習得
「話す・聞く・読む・書く」の四技能それぞれ個別の習得研究も行われている。【「話す」について、ある物語を語るとき、母語話者は忠実に話し、学習者は大胆な脚色が入る傾向がある。鳥 2910】、【「読む」について、学習者が学術論文を読み誤るのは、語の意味理解、文構造の捉え方、文脈との関連、背景知識などが原因。野田ほか 2017】とされた。
(6)習得理論の検証
【動詞の持つ内在的意味がテンスやアスペクトの習得に影響するというアスペクト仮説は支持された。菅谷 2004】など、言語習得に関する仮説を日本語学習者で裏付けできるか検証している。
(7)習得理論の活用
【タスク中心教授法など、習得に効果があると認められた。小柳 1998b】など、習得研究から提唱される仮説を具体的に応用・検証している。
(8)これからの習得研究
学習者の視点に立った研究、データに基づく実証的研究が進んでおり、人工知能(AI)と日本語教育との関連についての議論は既に始まっており、生成AIなどとの議論も今後大いに期待されるところである。また、ICTの進歩に伴う、新しいICTツールを日本語教育にどう取り入れていくかも興味深い領域である(参考文献参照)。
2.日本語の習得研究が日本語教育にどう活用できるかを考察する。
(1)学習者言語の変化を基にした日本語教育
学習者の発話などの変化をつかめば、学習者の中間言語の状態把握につながり、学習指導に生かせるものであり、これは患者に対する医者の正確な診断と治療に相当するであろう。ここで的確な診断を行えるためには、教師は多くの事例を把握しておくべきである。
(2)第2言語習得研究と日本語指導
【学習者の誤用を分析して、その結果を効果的な練習順序やカリキュラム作成に応用しようとする提案。小林ほか 2001】もあるので、今後の日本語指導に生かされると期待できる。
(3)学習者に求められる日本語教師
◯ 学習者の視点でさまざまな点に気配りができること。
クラッシェンのモニター・モデルでも、学習者の心理的な壁を低くすることが指摘されていた。この点からも、学習者の不安などに気配りして、教え方を工夫することが重要である。
◯ 学習者の誤用から学び、習得研究の成果を生かすこと
誤用は学習者が習得を進めている証しであり、教師は学習者の誤用を今後に生かす配慮が必要である。例えば、良い質問があれば、「いい質問です」、と励ますが、それと同様に誤用も一種の良い質問であると捉えて、肯定的に学習者を励ますために、「いい例文を出してもらいました」など工夫して、督励するようにしたいと思う。
◯ 授業を楽しむこと
教師自身の前向きな態度は学習者の雰囲気に必ず反映されるものだから、教師と学習者が共に成長していくことを楽しめることが重要である。
第4課題
添付ファイルによる提出: 添付ファイルによる提出は不可
文章直接入力の要否 : 文章入力欄への入力が必須
レポートの文字数制限 : 1200~2400文字
課題(有効期限:2024年4月1日~2025年1月8日)
課題 内容
第4課題 日本語の習得研究が日本語教育にどう活用できるのか教科書をもとに概説し、「求められる日本語教師とは何か」自分で調査し、考察しなさい。
第4課題
以下の項目に重点を置いてレポートを作成してください。
<課題把握>
【レポート課題の問い】を正確に理解できているか?
レポートを作成する際に踏まえるべき【考察条件】を見落としていないか?
【考察の種類・タイプ】(報告型か論証型か)を正確に判別できているか?
<教材理解>
【シラバスの学習範囲の内容】(とりわけ、教材の主張、専門用語、重要な論点など)を正確に理解できているか?
<論理構成>
【レポート課題とあなたの結論】がしっかりと対応しているか?
1パラグラフ・1主題の原則を踏まえて、適切な長さで書かれているか?
パラグラフで最も述べたいことが題目文の中に書かれているか?
パラグラフの中の文と文は概ねスムーズにつながっているか?
パラグラフ間がスムーズにつながっているか。
説明・論証に必要な【データと論拠】が補足文の中で十分に踏まえられているか?
<原稿作法文章作法>
【論理構成の観点】から見て、内容の重複がないか?
【文章作法の観点】から見て、誤字・脱字、語調の統一、主語と述語の対応、つなぎのための接続語等が適切に使われているか?
【原稿作法の観点】から見て、句読点、改行、行頭・行末の禁則、括弧記号等が適切か?
【引用・参考文献】(本文中と文末のリスト)の記載方法に誤りはないか?
本課題は、教科書第7章と第8章に書かれている内容として、これまでの「日本語の習得研究」を踏まえてそれを日本語の教育にどう生せばいいのか考えることと、第8章に書かれている「学習者に求められる日本語教師」について、新たに「自分で調査を行う」こと、の2点が必須内容となります。
第7章では、日本語習得研究の流れがどのように進んでいったか、近年の研究例を紹介しながら説明しています。そして、とりわけ2000年代に入ってから研究の内容は大きく変化し、研究対象や領域が変わり、その応用という点に注目が集まるようになりました。また、習得理論や仮説を検証しようとする研究、学習者の視点に立った研究が行われるようになりました。そして、このような日本語の第二言語習得研究が日本語教育にどのように活用できるのかについて、教科書をもとにまとめてください。
次に、レポート課題には「「求められる日本語教師とは何か」自分で調査し」とありますので、教科書第8章にあるこれまでの研究の結果わかったこととは別に、新たに2024年度現在において自分の周りにいる方に聞いてみた結果を示してください。調査内容は、教科書p203(8)にある「次の条件はあなたの先生に不可欠ですか」という質問(選択問題)をして答えてもらう。あるいは、「学習者として望む日本語教師とはどういう人ですか」という質問(記述問題)をして答えてもらう、でもいいですし、新たにご自分で作った質問を加えてより充実した調査にしてもより良いでしょう。
調査の方法はアンケート(紙に質問を書いて渡し記入してもらう。メールやSNSに入力して回答を返してもらう。あるいは最近はGoogle Forms等電子媒体で手軽に作れるアンケートもあるため、それをSNSやメールで拡散して回答してもらう方法もあります。)、インタビュー(直接会って、電話で、口頭で質問して答えをメモする)などがあります。ただし、実際に日本語を学ぶ外国人の方が身近にいる場合は少ないかもしれません。その場合は、ご友人やご家族など(日本語母語話者)に望ましい日本語教師ではなく「望ましい英語(語学)教師」に変えて調査をする、でも結構です。ご自分で実際に調査をやったことがわかるように、調査時期、調査方法、調査対象者と人数など調査の概要は丁寧に書きましょう。また、数値化できる点は数値化し、具体的な回答内容なども引用するようにしてください。調査結果の信頼性を高めるためです。
そして、そのオリジナル(独自)の調査から何がわかるか、その結果は教科書と同じだったか比較する。また、これまで出会った教師を思い出しその特質や良さについても書き加えても良いでしょう。
そのうえで、レポートの書き方に則った、構成のしっかりした論理的で学術的なレポートを目指しましょう。
教科書8.3 学習者に求められる日本語教師
(8)学習者が日本語教師に望む条件
柔軟性
楽しい授業
幅広い知識
標準的な日本語
経験
生徒の母語能力
相談相手
学習者の専門知識
論文発表
修士号
日本語教師に大切なこと