第二課題 回答案

第2課題
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課題(有効期限:2024年3月1日~2025年1月8日)

第2課題 ユダヤ教、キリスト教、イスラム(教)は一神教の宗教であるが、それぞれはどのような点が共通していて、どのような点が異なるのか。共通性(一神教の普遍的特徴)と特殊性(それぞれの宗教の特殊性)について記述したうえで日本の宗教伝統と比較し、考察を展開してください。

第2課題
以下の項目に重点を置いてレポートを作成してください。
<課題把握>
【レポート課題の問い】を正確に理解できているか?
<教材理解>
【シラバスの学習範囲の内容】(とりわけ、教材の主張、専門用語、重要な論点など)を正確に理解できているか?
テキスト以外の関係資料を参照して、【主題】を多角的に理解できているか?
<論理構成>
【レポート課題とあなたの結論】がしっかりと対応しているか?
<原稿作法文章作法>
【論理構成の観点】から見て、内容の重複がないか?
【文章作法の観点】から見て、誤字・脱字、語調の統一、主語と述語の対応、つなぎのための接続語等が適切に使われているか?
【引用・参考文献】(本文中と文末のリスト)の記載方法に誤りはないか?
ユダヤ・キリスト・イスラ―ムの一神教の宗教伝統は現代世界において人口の半数以上の人びとが信奉する宗教です。もととなるユダヤ教は一神とのみ契約を結ぶ特殊な宗教伝統を形成しています。一神教は現在ではいわゆる「宗教」を代表するように考えられていますが、多くの伝統社会では多神教的な伝統が一般的でした。ある観点からすると、一神教はかなり特殊な宗教的特徴を持っているという見方もできます。
 一神教は現在では世界の宗教人口の大部分も占める宗教となっています。国際情勢に大きく関係するイスラム圏とキリスト教圏の関係を理解するうえでも一神教の共通点や特殊性を理解しておくことは重要です。テキストではユダヤ教に関する記述は少ないですが、参考文献などで学習を広げながら、テキスト82頁、88頁なども参考にして考察してください。

第2課題 回答案
ユダヤ・キリスト・イスラ―ムの一神教 共通性(一神教の普遍的特徴)と特殊性(それぞれの宗教の特殊性)
キリスト教、教科書P82 「キリスト教の教典「聖書」は。ユダヤ教と共通する「旧約聖書」とキリスト教固有の「新約聖書」の2つからなる。」
イスラーム、教科書P88 「イスラームはユダヤ教やキリスト教と同じく、唯一神(=アッラーフ)を信仰する、中東特有の一神教の系譜に連なる宗教であるが、イスラーム教徒の理解では、イスラームはそれらの選考する一神教信仰が「最後の預言者」ムハンマドによって最も純粋なかたちで復興されたものである。」「ムハンマドが受け取り信徒に伝えた神の言葉を、彼の死後にまとめたものがクルアーンである。クルアーンは神の言葉そのものとされ、イスラームの根本となる聖典であって、原則としてイスラーム教徒の信仰生活、社会生活すべてを規定する。」
ユダヤ。教科書?

文献5 P14 「キリスト教の信者 22億、イスラーム 16億 地球上の人口の半分以上 ユダヤ人は1500万人。」「2000年前、一神教はユダヤ民族のところにしかなかった。厳密な一神教が成立したのは、ユダヤ民族の歴史のなかでもかなり遅い時期とされる。」「神は全知であり全能とならざるを得ない。」「神と人とが契約によって結びつくというのは一神教に特有の考え方である。」「イスラームという言葉の意味は「絶対服従」である。実質はアッラーに無条件にしたがう教えをさしている。」「イスラームは宗教であるばかりでなく、生活のすみずみにまで浸透し、方や政治をも包括するシステムとして機能している。」「キリスト教は聖俗を分離させて使い分けてきた。」「マホメットとコーランはイスラームを信仰しない人の呼び方である。」「ムハンマドとクルアーンは、イスラームを信仰する人の呼び方である。」「イスラームは都市の宗教である。砂漠の宗教ではない。」「一神教は都市民の宗教である。氏族の崩壊、おのが立ち位置の喪失、血縁共同体からの絶縁。そこに一神教が成り立つ契機がある。」「唯一神は絶対的な抽象である。抽象的だからこそ絶対の存在になることができる。具体的であるかぎり相対の存在でしかない。イスラームはこの認識を徹底させている。偶像崇拝を激しく否定する理由もここにある。」「一神教は多神教世界に戦いをいどみつづけながら、多神教にまみれていった。」「一神教が奴隷の宗教であることと戦争の宗教であることは連動している。」「乳飲み子まで・・・・。無差別攻撃こそ神の御旨(みむね)にかなった行為である。」「ユダヤ教における福祉の精神はイスラムに受け継がれた。」「近世のキリスト教における福祉事業の多くは、イスラームにおいて発展したそれを継承したものである。」「(割礼)の習慣はユダヤ教からキリスト教が独立するときに排除されたが、イスラームにはそのまま受け継がれたのである。」ユダヤ教もキリスト教も「アブラハムの宗教」から出発している。それはイスラームも同じである。」「ユダヤ教はアブラハムの正妻の子、嫡子のイサク、その子ヤコブから受け継がれている」「イスラームはアブラハムの奴隷の子、イシュマエル、追放された子」を先祖とするムハンマドが開祖で、イスラームを「イシュマエルの宗教」と呼ぶ。「ユダヤ教は律法に固執し、割礼に固執した。そうすることで、神に選ばれた民としてのアイデンティティを保ち続けた。」「キリスト教は律法に代わる愛を宣言した。そうすることで、選民のための民族宗教という枠を越え、世界宗教として展開する方向を選び取った。」「イスラームはユダヤ教にならい、むしろユダヤ教にまさるとも劣らぬほど律法を遵守し、割礼にも固執した。それでいて選民という枠を越えた宗教を実現した。その鍵は、ムハンマドが選ばれざるものイシュマエルをおのが先祖としたことに求められる。」「ユダヤ教の神は世界を創造した。そしてすべての生き物を人の支配にゆだねた。人は鳥や獣にまさる存在である。この考え方はキリスト教にも受け継がれた。」「アラブの後輩の考え方はイスラエルの先輩たちのそれとは異なっている。神は人もあらゆる生き物もつくりつづけていると考える。そこには後先はない。」「ムスリムが義務としてはたすべき行為が五つある。信仰告白、礼拝、喜捨、断食、巡礼である。これを五行という、あるいは五柱ともいう。」「誰でも自分の信念を持つことができる。その信念は尊重されてよい。そして同じように他人の信念も尊重されてよいし、尊重されねばならない。宗教を信じるのもおなじである。これもクルアーンが教えるところである。」「三つの一神教が共存する。(引用者略)かつてそれは中世のスペインで実現していたのである。」「八百年近くにおよぶイスラーム支配のもとで、かなりの数のユダヤ人がイベリア半島に暮らしていた。それは穏やかな時代であった。ところがキリスト教徒がムスリムを駆逐したとき、スペイン国王の名のもとにユダヤ人までがいっしょに追放されたのである。」

文献1 P323エピローグ 「日本人ーーー少なくとも私は、ヨーロッパ的な歴史観に毒されている。すなわち、人類は理性に基づく啓蒙を通じて宗教を克服する、民主主義と科学万能の近代を打ち立てる、という世界観です。」「日本を考えればわかりますが、もとが多神教の土壌ですから、他の宗教が入ってきても、決定的な対決とはなりません。(引用者略)それは真理はひとつではないという感覚が、はじめからあるからだと思います。同じ理屈で、宗教の真実と民主主義の真実、あるいは科学の真実も共存できることになります。これが一神教には難しい。ユダヤ教、キリスト教、イスラム教、ともに同じ神を信仰しているというのに、他を認めることができない。真実はひとつしかないからです。一元的な発想しかできないのです。」
文献1 P122三宗教はなぜひとつになれないのか 「ユダヤ教は民族宗教で、キリスト教徒イスラム教は民族の枠を超えた世界宗教です。」「ユダヤ人は神に選ばれた民族」「キリスト教はユダヤ教を(引用者略)イエスを殺した者たちだとして敵視します。」「キリスト教が人間中心主義だとすると、イスラム教とユダヤ教は神中心主義」「イスラム教の「クルアーン」、ユダヤ教の聖典、神の言葉は絶対に変えてはいけない。」「ユダヤ教もイスラム教も原理主義的な傾向が強い。」「聖職者の位置づけ(引用者略)聖なる存在ということではありません。対するキリスト教では(引用者略)聖なる存在になります。」「ユダヤ人は(引用者略)商業的性格を持ち続けます。(引用者略)イスラム教は(引用者略)商業的性格は失いません。商業民に特有の互助精神を働かせていくのです。(引用者略)キリスト教は(引用者略)農耕社会です。(引用者略)定住農耕社会では外からやってくる人に警戒心を抱きます。」
文献1 P151 なぜキリスト教には聖人が沢山いるのか 「天使たち、聖人たちが多神教の世界のニーズに応えました。」

文献2 P307 「キリスト教世界」において何が共存を妨げてきたのか 「キリスト教の中には、その歴史の始まりから優越的置換主義への傾斜が存在していた。それはユダヤ教とキリスト教の関係において典型的に見られる。キリスト教が「新しいイスラエル」として「古いイスラエル」であるユダヤ教に取って代わるという考え方は、「ヘブライ人への手紙」をはじめとし、新約聖書の中に見られる。ユダヤ教の「聖書」は「旧約聖書」と呼ばれ、「新約聖書」が「旧約聖書」に取って代わる。旧約聖書も新約聖書もキリスト教の正典とされたが、両者の間には救済論的な序列があると言わざるを得ない。このようなユダヤ教に対するキリスト教の優越的置換主義が、ヨーロッパ社会における反ユダヤ主義の一因になったと考えられる。」

文献1 よくわかる一神教 ユダヤ教、キリスト教、イスラム教から世界史をみる 佐藤賢一著 集英社 2021.6

タイトル 「ユダヤ」の世界史 ユダヤ ノ セカイシ
一神教の誕生から民族国家の建設まで
著者 臼杵陽/著 ウスキ,アキラ
出版者 東京 作品社
出版年 2020.1豊洲 本 開架 在架
タイトル 集中講義旧約聖書 シュウチュウ コウギ キュウヤク セイショ
「一神教」の根源を見る
著者 加藤隆/著 カトウ,タカシ
出版者 東京 NHK出版
出版年 2016.2古石場 本 開架 在架

文献5 ユダヤ教キリスト教イスラーム 一神教の連環を解く菊地章太著 ちくま新書 2013.12
文献2 ユダヤ教・キリスト教・イスラームは共存できるかーーー一神教世界の現在 森孝一編 明石書店 2008.12
文献3 いま宗教に向きあう1 現代日本の宗教事情、<国内編Ⅰ> 堀江宗正編 岩波書店 2018.9

回答案
 ユダヤ・キリスト・イスラ―ムの一神教それぞれの共通性(一神教の普遍的特徴)と特殊性(それぞれの宗教の特殊性)について述べる。
(1)一神教について
 (共通点)それぞれ、唯一絶対の創造主である「神」を信じており、それぞれの神は同一だとされる。そして、ユダヤ教・キリスト教・イスラム教共に、「啓示宗教」と呼ばれる。「啓示」とは、神が、神自身または預言者を通して、人間へ真理を伝達することであり、神から啓示を受けたとされる預言者の教えを、聖書・聖典によって伝えている「啓示宗教」である。なお、預言者は予言者とは異なり、神の言葉などを預かる者を意味する。
 (相違点)キリスト教では、イエスが神の国の福音を説き、罪ある人間を救済するために自ら十字架にかけられ、復活した救い主(キリスト、メシア)と信じる。ユダヤ教とイスラム教ではこれを認めない。多くのキリスト教派では、「父なる神」と「その子キリスト」と「聖霊」を唯一の神(「三位一体」)として信仰する。これは文献1では、「天使たち、聖人たちが多神教の世界のニーズに応えました。」とあるように、布教には役立ったであろう。
 (相違点)イスラム教では、唯一神のみを認める。モーゼもイエスも預言者としてだけ認める。
(2)聖典について
 (共通点)啓示宗教として、預言者の教えを伝える聖書・聖典については、ユダヤ教はアブラハムの子孫であるユダヤ人に伝えられたヘブライ語聖書を聖典として先祖代々受け継いでいる。このヘブライ語聖書は、キリスト教とイスラム教でも旧約聖書と呼んで聖典としているのが共通している。
 (相違点)キリスト教では、旧約聖書に加えて新約聖書も聖典とする。文献2では、「ユダヤ教の「聖書」は「旧約聖書」と呼ばれ、「新約聖書」が「旧約聖書」に取って代わる。旧約聖書も新約聖書もキリスト教の正典とされたが、両者の間には救済論的な序列があると言わざるを得ない。このようなユダヤ教に対するキリスト教の優越的置換主義が、ヨーロッパ社会における反ユダヤ主義の一因になったと考えられる。」
 (相違点)イスラム教では、モーゼやイエスの教えを、最後の預言者であるムハンマドが完全なものにしたとして、クルアーンだけを聖典とする。

(3)偶像崇拝禁止と聖地について
 (共通点)ユダヤ教・キリスト教・イスラム教はそれぞれの聖地があるが、エルサレムは共通の聖地となっている。偶像崇拝禁止もユダヤ教から禁止されていたのが共通している。
 (相違点)キリスト教での偶像崇拝禁止は、徹底していない。
 (相違点)イスラム教での偶像崇拝禁止は、徹底している。
(4)民族宗教か世界宗教か
 (相違点)民族に対する態度について文献1では、「ユダヤ教は民族宗教で、キリスト教とイスラム教は民族の枠を超えた世界宗教です。」「ユダヤ人は神に選ばれた民族」「キリスト教はユダヤ教を(引用者略)イエスを殺した者たちだとして敵視します。」としています。また、「ユダヤ人は(引用者略)商業的性格を持ち続けます。(引用者略)イスラム教は(引用者略)商業的性格は失いません。商業民に特有の互助精神を働かせていくのです。(引用者略)キリスト教は(引用者略)農耕社会です。(引用者略)定住農耕社会では外からやってくる人に警戒心を抱きます。」としています。
(5)原理主義か
 (相違点)文献1では、「キリスト教が人間中心主義だとすると、イスラム教とユダヤ教は神中心主義」「イスラム教の「クルアーン」、ユダヤ教の聖典、神の言葉は絶対に変えてはいけない。」「ユダヤ教もイスラム教も原理主義的な傾向が強い。」としています。しかし、キリスト教も教派によって原理主義的な部分もあるようです。
(6)聖職者の位置づけ
 (相違点)文献1では、(ユダヤ教とイスラム教では)「聖職者の位置づけ(引用者略)聖なる存在ということではありません。対するキリスト教では(引用者略)聖なる存在になります。」としています。

(7)相違点2 ユダヤ教独自の点
最初に、ユダヤ教についてである。ユダヤ教においては選民思想とメシア思想が特徴的である。ただし、イエスをメシアだとは認めない。また、単に信じればいいのではなく、入信までにさまざま厳しい決まりがある。唯一神ヤハウェを信じる。
ユダヤ教においては、モーセなど、唯一神ヤハウェから直接啓示を受けられた存在を崇拝し、また、その神からの啓示を大切にする。
(6)相違点3 キリスト教独自の点
 次に、キリスト教についてである。キリスト教においては三位一体論とその多様性、また原罪や贖罪や再臨思想が特徴的である。イエスをメシアとし、イエス・キリストと呼ぶ。キリストというのは「救い主」という意味で、そう表現するだけでイエスを救い主だという信仰告白をしていることになる。父なる神と子なるイエス・キリストと聖霊を信じる。
キリスト教においては、イエス・キリストが神の子であり、神と神の子であるイエスと聖霊が一体であると信じる(三位一体説)。
(7)相違点4 イスラム教独自の点
 最後に、イスラームについてである。イスラームにおいてはその戒律の厳しさと社会的色合いが特徴的である。いわゆる六信五行を大事にし、唯一神アッラーを信じる。イエスも預言者の一人であることは認めるが、ムハンマドを最後の預言者とし、「クルアーン」を最も重要な啓典とする。
イスラム教において、ムハンマドは「最後にして唯一の預言者」とされています。
イスラム教においては、最後にして唯一の預言者ムハンマドが、唯一神アッラーから啓示を受けた『クルアーン(コーラン)』を最も尊い聖典とし、『クルアーン(コーラン)』の教えの通りに生きていく。
 キリスト教では
イスラムであっても、「旧約聖書」、「新訳聖書」を「クルアーン(コーラン)」と共に認めています。

回答案
 ユダヤ・キリスト・イスラ―ムの一神教それぞれの共通性(一神教の普遍的特徴)と特殊性(それぞれの宗教の特殊性)について述べる。
(1)一神教について
 (共通点)それぞれ、唯一絶対の創造主である「神」を信じており、それぞれの神は同一だとされる。そして、ユダヤ教・キリスト教・イスラム教共に、「啓示宗教」と呼ばれる。「啓示」とは、神が、神自身または預言者を通して、人間へ真理を伝達することであり、神から啓示を受けたとされる預言者の教えを、聖書・聖典によって伝えている「啓示宗教」である。なお、預言者は予言者とは異なり、神の言葉などを預かる者を意味する。
 (相違点)キリスト教では、イエスが神の国の福音を説き、罪ある人間を救済するために自ら十字架にかけられ、復活した救い主(キリスト、メシア)と信じる。ユダヤ教とイスラム教ではこれを認めない。多くのキリスト教派では、「父なる神」と「その子キリスト」と「聖霊」を唯一の神(「三位一体」)として信仰する。これは文献1では、「天使たち、聖人たちが多神教の世界のニーズに応えました。」とあるように、世界宗教化には役立ったであろう。
 (相違点)イスラム教では、唯一神のみを認める。モーゼもイエスも預言者としてだけ認める。
(2)聖典について
 (共通点)啓示宗教として、預言者の教えを伝える聖書・聖典については、ユダヤ教はアブラハムの子孫であるユダヤ人に伝えられたヘブライ語聖書を聖典として先祖代々受け継いでいる。このヘブライ語聖書は、キリスト教とイスラム教でも旧約聖書と呼んで聖典としているのが共通している。
 (相違点)キリスト教では、旧約聖書に加えて新約聖書も聖典とする。文献2では、「ユダヤ教の「聖書」は「旧約聖書」と呼ばれ、「新約聖書」が「旧約聖書」に取って代わる。旧約聖書も新約聖書もキリスト教の正典とされたが、両者の間には救済論的な序列があると言わざるを得ない。このようなユダヤ教に対するキリスト教の優越的置換主義が、ヨーロッパ社会における反ユダヤ主義の一因になったと考えられる。」としている。
 (相違点)イスラム教では、モーゼやイエスの教えを、最後の預言者であるムハンマドが完全なものにしたとして、クルアーンだけを聖典とする。

(3)偶像崇拝禁止と聖地について
 (共通点)ユダヤ教・キリスト教・イスラム教にはそれぞれの聖地があるが、エルサレムは共通の聖地となっている。偶像崇拝禁止もユダヤ教から禁止されていたのが共通している。
 (相違点)キリスト教での偶像崇拝禁止は、徹底していない。
 (相違点)イスラム教での偶像崇拝禁止は、徹底している。
(4)民族宗教か世界宗教か
 (相違点)民族に対する態度について文献1では、「ユダヤ教は民族宗教で、キリスト教とイスラム教は民族の枠を超えた世界宗教です。」「ユダヤ人は神に選ばれた民族」「キリスト教はユダヤ教を(引用者略)イエスを殺した者たちだとして敵視します。」としている。また、「ユダヤ人は(引用者略)商業的性格を持ち続けます。(引用者略)イスラム教は(引用者略)商業的性格は失いません。商業民に特有の互助精神を働かせていくのです。(引用者略)キリスト教は(引用者略)農耕社会です。(引用者略)定住農耕社会では外からやってくる人に警戒心を抱きます。」としている。
(5)原理主義か
 (相違点)文献1では、「キリスト教が人間中心主義だとすると、イスラム教とユダヤ教は神中心主義」「イスラム教の「クルアーン」、ユダヤ教の聖典、神の言葉は絶対に変えてはいけない。」「ユダヤ教もイスラム教も原理主義的な傾向が強い。」としている。しかし、キリスト教も教派によって原理主義的な部分もあるようだ。
(6)聖職者の位置づけ
 (相違点)文献1では、(ユダヤ教とイスラム教では)「聖職者の位置づけ(引用者略)聖なる存在ということではありません。対するキリスト教では(引用者略)聖なる存在になります。」としている。
(7)日本の宗教伝統との比較
 文献1では、「日本人ーーー少なくとも私は、ヨーロッパ的な歴史観に毒されている。すなわち、人類は理性に基づく啓蒙を通じて宗教を克服する、民主主義と科学万能の近代を打ち立てる、という世界観です。」「日本を考えればわかりますが、もとが多神教の土壌ですから、他の宗教が入ってきても、決定的な対決とはなりません。(引用者略)それは真理はひとつではないという感覚が、はじめからあるからだと思います。同じ理屈で、宗教の真実と民主主義の真実、あるいは科学の真実も共存できることになります。これが一神教には難しい。ユダヤ教、キリスト教、イスラム教、ともに同じ神を信仰しているというのに、他を認めることができない。真実はひとつしかないからです。一元的な発想しかできないのです。」としている。ここで言う「理性」に共感はしないが、科学重視と多神教の傾向が日本人にあると思うので、唯一神を日本人が受け入れなかったのは、まずそこに原因があると思う。多分、これからの日本人も、八百万の神々に囲まれながら、これは宗教じゃない、とか言いながら過ごすのかもしれない。

文献1 よくわかる一神教 ユダヤ教、キリスト教、イスラム教から世界史をみる 佐藤賢一著 集英社 2021.6
文献2 ユダヤ教・キリスト教・イスラームは共存できるかーーー一神教世界の現在 森孝一編 明石書店 2008.12
文献3 いま宗教に向きあう1 現代日本の宗教事情、<国内編Ⅰ> 堀江宗正編 岩波書店 2018.9
文献5 ユダヤ教キリスト教イスラーム 一神教の連環を解く菊地章太著 ちくま新書 2013.12
Q.1 必須

ユダヤ教、キリスト教、イスラム(教)は一神教の宗教であるが、それぞれはどのような点が共通していて、どのような点が異なるのか。共通性(一神教の普遍的特徴)と特殊性(それぞれの宗教の特殊性)について記述したうえで日本の宗教伝統と比較し、考察を展開してください。
1:  ユダヤ・キリスト・イスラ―ムの一神教それぞれの共通性(一神教の普遍的特徴)と特
2: 殊性(それぞれの宗教の特殊性)について述べる。
3: (1)一神教について
4:  (共通点)それぞれ、唯一絶対の創造主である「神」を信じており、それぞれの神は同
5: 一だとされる。そして、ユダヤ教・キリスト教・イスラム教共に、「啓示宗教」と呼ばれ
6: る。「啓示」とは、神が、神自身または預言者を通して、人間へ真理を伝達することであ
7: り、神から啓示を受けたとされる預言者の教えを、聖書・聖典によって伝えている「啓示
8: 宗教」である。なお、預言者は予言者とは異なり、神の言葉などを預かる者を意味する。
9:  (相違点)キリスト教では、イエスが神の国の福音を説き、罪ある人間を救済するため
10: に自ら十字架にかけられ、復活した救い主(キリスト、メシア)と信じる。ユダヤ教とイ
11: スラム教ではこれを認めない。多くのキリスト教派では、「父なる神」と「その子キリス
12: ト」と「聖霊」を唯一の神(「三位一体」)として信仰する。これは文献1では、「天使
13: たち、聖人たちが多神教の世界のニーズに応えました。」とあるように、世界宗教化には
14: 役立ったであろう。
15:  (相違点)イスラム教では、唯一神のみを認める。モーゼもイエスも預言者としてだけ
16: 認める。
17: (2)聖典について
18:  (共通点)啓示宗教として、預言者の教えを伝える聖書・聖典については、ユダヤ教は
19: アブラハムの子孫であるユダヤ人に伝えられたヘブライ語聖書を聖典として先祖代々受け
20: 継いでいる。このヘブライ語聖書は、キリスト教とイスラム教でも旧約聖書と呼んで聖典
21: としているのが共通している。
22:  (相違点)キリスト教では、旧約聖書に加えて新約聖書も聖典とする。文献2では、「
23: ユダヤ教の「聖書」は「旧約聖書」と呼ばれ、「新約聖書」が「旧約聖書」に取って代わ
24: る。旧約聖書も新約聖書もキリスト教の正典とされたが、両者の間には救済論的な序列が
25: あると言わざるを得ない。このようなユダヤ教に対するキリスト教の優越的置換主義が、
26: ヨーロッパ社会における反ユダヤ主義の一因になったと考えられる。」としている。
27:  (相違点)イスラム教では、モーゼやイエスの教えを、最後の預言者であるムハンマド
28: が完全なものにしたとして、クルアーンだけを聖典とする。
29: (3)偶像崇拝禁止と聖地について
30:  (共通点)ユダヤ教・キリスト教・イスラム教にはそれぞれの聖地があるが、エルサレ
31: ムは共通の聖地となっている。偶像崇拝禁止もユダヤ教から禁止されていたのが共通して
32: いる。
33:  (相違点)キリスト教での偶像崇拝禁止は、徹底していない。
34:  (相違点)イスラム教での偶像崇拝禁止は、徹底している。
35: (4)民族宗教か世界宗教か
36:  (相違点)民族に対する態度について文献1では、「ユダヤ教は民族宗教で、キリスト
37: 教とイスラム教は民族の枠を超えた世界宗教です。」「ユダヤ人は神に選ばれた民族」と
38: している。
39: (5)原理主義か
40:  (相違点)文献1では、「キリスト教が人間中心主義だとすると、イスラム教とユダヤ
41: 教は神中心主義」「イスラム教の「クルアーン」、ユダヤ教の聖典、神の言葉は絶対に変
42: えてはいけない。」「ユダヤ教もイスラム教も原理主義的な傾向が強い。」としている。
43: しかし、キリスト教も教派によって原理主義的な部分もあるようだ。
44: (6)聖職者の位置づけ
45:  (相違点)文献1では、(ユダヤ教とイスラム教では)「聖職者の位置づけ(引用者略)
46: 聖なる存在ということではありません。対するキリスト教では(引用者略)聖なる存在に
47: なります。」としている。
48: (7)日本の宗教伝統との比較
49:  文献1では、「日本人ーーー少なくとも私は、ヨーロッパ的な歴史観に毒されている。
50: すなわち、人類は理性に基づく啓蒙を通じて宗教を克服する、民主主義と科学万能の近代
51: を打ち立てる、という世界観です。」「日本を考えればわかりますが、もとが多神教の土
52: 壌ですから、他の宗教が入ってきても、決定的な対決とはなりません。(引用者略)それ
53: は真理はひとつではないという感覚が、はじめからあるからだと思います。同じ理屈で、
54: 宗教の真実と民主主義の真実、あるいは科学の真実も共存できることになります。これが
55: 一神教には難しい。ユダヤ教、キリスト教、イスラム教、ともに同じ神を信仰していると
56: いうのに、他を認めることができない。真実はひとつしかないからです。一元的な発想し
57: かできないのです。」としている。ここで言う「理性」に共感はしないが、科学重視と多
58: 神教の傾向が日本人にあると思うので、唯一神を日本人が受け入れなかったのは、まずそ
59: こに原因があると思う。多分、これからの日本人も、八百万の神々に囲まれながら、これ
60: は宗教じゃない、とか言いながら過ごすのかもしれない。
文献1 よくわかる一神教 ユダヤ教、キリスト教、イスラム教から世界史をみる 佐藤賢一著 集英社 2021.6
文献2 ユダヤ教・キリスト教・イスラームは共存できるかーーー一神教世界の現在 森孝一編 明石書店 2008.12
文献3 いま宗教に向きあう1 現代日本の宗教事情、<国内編Ⅰ> 堀江宗正編 岩波書店 2018.9
文献5 ユダヤ教キリスト教イスラーム 一神教の連環を解く菊地章太著 ちくま新書 2013.12

総合評価A担当教員名:平良 直
合否合格
項目別評価
課題把握A教材理解A
論理構成A原稿作法・文章作法A
コメント野上さん

 レポートお疲れ様でした。
 構成、考察内容どちらも真摯に課題に取り組まれたことが良くわかるものとなっており高く評価いたしました。参考文献の記し方ですが、書名を『 』でしるし、論文などを「」で記すなどすれば整います。たとえば、佐藤賢一著『よくわかる一神教 ユダヤ教、キリスト教、イスラム教から世界史をみる』集英社、2021年にするとよいでしょう。以下の総評的コメントも参考にしてください。
課題提出者の意図としては、なかなかまとめて勉強することがすくないユダヤ・キリスト・イスラームの思想や宗教的特徴などを理解しておいて欲しいということがあります。マスコミなどで中東の紛争などが報じられますが紛争国や関連地域の背景にある文化的相違や共通性などを知らないと、ことの深刻さや情報の読み解き方も浅くなります。こういう機会でもないとなかなか自分でユダヤ教とキリスト教の連続、そしてイスラームへと展開する宗教伝統の歴史的な連続を知る機会はありません。大変な課題ではあったとおもいますが真剣に取り組まれた分だけ得るところも大きかったのではないでしょうか。テキストの記述はコンパクトにまとめてあるため、この機会に関連する書籍や参考書などから中東の歴史や現在の紛争の歴史的経緯などを調べてみることをおすすめします。また、聖書(旧約部分はユダヤのトーラー部分)などもまだ読んだことが無い場合は実際手にとって読まれることをお勧めします。クルアーンもウェブ上で読むことができます。

 エルサレムなどはイスラエル国家が成立する以前は共同管理などがなされており現在のような形での軍事的摩擦や紛争とは縁遠いものだったことがわかります。歴史的に攻防があったことは確かですが現在のような混沌とした状況は、政治的な利害や大国の思惑などが絡んでたち起こってきた側面があります。同一の神を仰ぎ、啓典の宗教であり、我々日本人からすれば同じ一神教の宗教がなぜこれほど仲違いするか。難しい問題ではありますが基本的なことを知っておくのは重要なことだと考えます。これらの宗教伝統を日本の宗教伝統と比較するとどうか。これも比較の対象や視点によって様々なことが言えるかと思いますが、違いや共通性などを自分なりに考えてみることは重要です。今後も機会があるごとに関連する参考図書などで考察を深めていって欲しいとおもいます。